Present for you!

 Happy Birthday、森永君〜+゚。*(*´∀`*)*。゚+!!!
 拙宅では二回目の森誕です。無事にお祝いできて良かった~。
 今日は張り切って暴君ブロガー様のお宅を巡りますよ!


 ということで今回のお話は森永君のお誕生日の話なのですが……なんと、本人が出てきません(爆)。そしてファンブックを読まれていない方にとっては「何でこの人たち面識あんの?」といった内容になっていますが、その場合はどうぞ広いお心でスルーしていただければと思います。また、途中ちょこちょこ登場するエセ関西弁も見逃していただけると幸いです。
 私なりに、森永君に愛を込めて\(^o^)/☆

 
 ではでは、よろしくお願いいたします。







「え、森永君の誕生日って来週なの?」

 隣の男は軽い調子で「出張があと一週間ずれていたら自分もお祝いができたのに」なんて続けているが、森永がコイツからの祝いを素直に受け取るはずない。そもそもコイツが素直に祝うはずがない。どうせ森永をからかって弄り倒したいという腹だろうに。それに巻き込まれるのはこっちなのだ、謹んで自重しやがれと文句をいいたい。
 俺が心の中で悪態をついていることに気付いているのかいないのか、見た目だけはちゃんとしたサラリーマン風の男――磯貝は機嫌良さそうに手元のグラスを傾けている。
「森永君っていくつになるんだっけ?まだ二十代前半でしょ?いいねぇ若いねぇ」
 たかだか数年しか離れていないくせに何を羨ましがっているんだコイツは。今度は俺の内心に思い至ったようで、目の前の男は片方の口の端を釣り上げるようにして笑う。
「社会人になったらね、学生さんは等しく眩しく見えるものなんだよ」
「意味わかんねぇし」
 そもそも意味がわからないのはこの状況だ。何で俺は出張でこっちにきた磯貝の呼出に応じ、こんなところで酒を飲んでいるのだろう。ガン無視しても良かったのだけど、あの忌々しいカラオケ動画をかなこと松田さんに見せると脅されては言うことを聞かざるを得ないではないか。完全なる脅迫だ。巴たちに見られたのも大打撃だったが、これ以上被害は増やしたくない。
 敢えて救いを挙げるとすれば、今日は森永が学会で不在ということぐらいか。もしもアイツがいれば一悶着どころではすまないない騒ぎがになってたに違いないから。

 無理やり引っ張られてきた店の中を見渡すと、やや薄暗い照明はこうしてカウンター席であれば互いの顔がはっきりわかる程度には明るく、フロアのソファーはその関係の密さを求められるかもしれない明度となっている。何が悲しくて磯貝と顔を近づけにゃならんのだということで、最初からソファー席は検討外だ。とはいえ、ソファーが隣の席の会話が気にならない距離を保って配置されているのには好印象を持った。BGMの落ち着いたジャズのセレクトもいい。以前一度だけ来たことがある店だが、あのときは滞在時間も短かったし慌てていたので、こんなに雰囲気のいい店だとは気がつかなかった。



 が。



 視界に入る客全員が男というのが最大で最悪の問題だ。



「くそ……ここにいる客全員滅んでしまえ」
「まって宗一君、そうなると俺も巻き込まれてしまうんだけど」
「率先してお前は滅べ」
 なおもごちゃごちゃと言ってくる磯貝を無視してグラスを傾けていると、目の前にツマミが盛られた小皿が差し出された。薄切りのフランスパンの上に彩りよく生ハムだとかチーズだとか緑の葉っぱとかが乗せられていて、店の雰囲気にあった小洒落た一品だと思う。乗せられている具材が数種類あるのもいい。
 そういえば、たまに森永も家飲みのときに同じようなツマミを作るな。たかだか家飲みにこんなバーで出すのが似合うようなツマミを作るなんて、アイツはやっぱりアホだと思う。美味いから文句はないけれど。
「はい、どうぞ。お客さんら、何やら物騒な話されてますねぇ……」
 カウンターの内側にいるその男と磯貝は顔見知りらしく、磯貝は店内に入るなりこの店員の目の前の席を確保していた。親しげに話しかける磯貝に対し若干顔を引きつらせながらの接客はどうかと思ったが(まぁ対磯貝だから仕方ない)、中性的な顔立ちで物腰も柔らかく、いかにも接客業に向いていそうな人物ではある。こーいう店でなくても働いていけそうなのに、残念だ。
「でしょう?彼ったらホモフォビアなものだから言う事が過激なんだよね」
「!おい、磯貝っ!」
 確かにその通りだけどさすがにこういう店でその発言は如何なものか。なら入ってくるなと言われたらその通りだし、俺だっていくらホモとはいえ見ず知らずの、しかもこんな人の良さそうな男にまで喧嘩をふっかけるつもりはない。
 慌てる俺をみて店員は控えめに微笑むと、大丈夫だというというように軽く頷いてみせた。
「この席に座っていればボクのお客さんやということで他のスタッフが接客することもないですし、お連れさんがいれば他のお客さんから声かけられることもありませんから。居心地は悪いでしょうけど、ちょっとでもお酒楽しんでってください」
 柔らかい関西弁でそう言うと、店員はちらりと磯貝に嗜めるような目線を送ってから奥に引っ込んでいった。店内にはそこそこの客の入りなので彼も忙しいのだろう。
「……お前アホか。こんな場所で言うことねぇだろ」
「あはは、ゴメン」
 全っ然悪びれていない様子なのがムカつく。
「つうか何でこの店なんだよ。馬鹿じゃねぇのお前」
「んー、ゲイバーなのは置いといて、フツーにお酒と料理が美味いから?そのブルスケッタだって美味しいでしょ?定番だし手が込んでいるものでもないのにさ」
 そう言われて手に持ったフランスパンをじっと見る。その上には混ぜ合わせられたサイコロ状のサーモンとアボカドが乗せられており、彩りに添えられているのは多分ネギ。一口齧れば洋風の見た目に反してワサビや醤油の風味が感じられ、正直これはかなり美味い。
「いや、手が込んでいるだろ」
 自分が食べるより森永に食わせてやりたい。そしたら家でも再現してもらえるのに。
「そう?……あ、前言撤回。予想外の味でした」
 そう思うなら黙って味わっておけばいいのに、

「森永君にも食べてもらいたいねぇ」
「ぶっ!!!」

 離れたところにいたあの店員が何事かとこちらを見たのがわかった。
「おおおおまっ!」
「だって彼なら味を再現してくれそうじゃない?料理上手な彼氏っていいねぇ」
「てめっ!」
 思わず磯貝の胸ぐらを掴んで立ち上がろうとしたところ、
「お客さん?どないしました?」
 いつの間に近付いていたのか、柔らかい声であの店員に問われた。さすがにこんな雰囲気のいい店で暴れるわけにもいかな、
「いやぁ、彼の恋人が料理上手だって褒めただけなんだけどね〜」
「は!?こっ、恋人じゃねぇし!」
 何勝手なこといいやがるんだコイツは!!
 再び胸ぐらに手を伸ばそうとしたところを、店員に「お客さん落ち着いて!ね?」とカウンター越しに制止された。さすがに二度の大声は店内の注目を集めてしまったようで、背中に刺さるチクチクとした視線が痛い。学内ならまだしもこういう店で視線を集めてしまうとは。
 慌てて声を落として磯貝を脅す。
「ったく、てめぇのせいで恥かいただろうが!俺はもう帰るからな!」
「まぁまぁ。もうちょっと話そうよ。森永君の誕生日が近いんでしょ?一緒に誕生日プレゼント考えてあげるから」
「いらん!そもそも俺はアイツに何かやる気はない!」
「え、ウソでしょ?本当に?あんなに衣食住でお世話になってるのに?」
「うっ……」
 馬鹿正直に言葉に詰まると、磯貝はカウンターに向かってちょいちょいと手招きをした。
「何でしょ?お客さんら、喧嘩は勘弁してもらえますか」
「ごめんごめん。水割りをもう一杯もらえる?あとね、ちょっと聞きたいんだけど。君だったら、恋人から何をもらえると嬉しい?」
「おいっ!」
「何なに、お客さんの恋人さん、誕生日が近いの?」
「うん、って俺じゃなくて彼のねー」
「だから!恋人じゃねぇって!」
 先ほどの失態から声を抑えに抑えて射殺すつもりで睨むも、睨まれている本人は腹がたつほど飄々としている。いっその事、このまま首締めてやるわけにはいかないだろうか。
「えと、眼鏡のお兄さんの、恋人さん?」
「そーそー」
「違うっ!」
 二人が同時に喋る上にまったく異なることを言うものだから、人の良さそうな店員はパシパシと目を瞬かせている。
「宗一君ったら恥ずかしがり屋さんなんだからっ」
「いいいい磯貝、テメェ本当に殺すぞ!?」
 再びヒートアップしそうになった瞬間、店員が絶妙なタイミングで新しいグラスを磯貝の前に置く。そしてニコリとこちらを向いて微笑んだ。
「お客さんの“親しい”人へのプレゼント、ということ?」
 そう言ってことりと首を傾げた仕草は、男だというのに妙に似合っていた。
「……親しいっていうかただの同居人だ」
「ただの同居人、ねぇ」
 含みをもたせた磯貝の声は聞こえないふりをした。



「うーん、そうですねぇ……ベタやけど、お花なんてどうでしょ。買うのも貰うのも恥ずかしいけど、特別感はでますやろ」

「おー、確かにベタだねぇ。でも二人とも意外と花が似合う、かも?森永君だったらバラよりもヒマワリとかいいんじゃない?」

「ウチに花瓶なんてねーよ。一升瓶に活けるのもアレだろ」

「うっ、確かにそれは……じゃあ、これもベタやけどアクセサリーとかは?季節的にバングルとかどうでしょ?」

「いいねぇ。森永君、そういうさりげないお洒落に拘りそうだし、喜んでくれそうだけど。ちなみにバングルって腕輪のことね」

「馬鹿やろう。毎日実験があるのにそんなちゃらちゃらしたモンがつけられるか」

「じゃ、じゃあお財布とか!ド定番やけど!」

「うんうん、森永君も来年から社会人だもんね、いいモノを持つタイミングとしてもいいんじゃない?」

「あー何か最近革の財布に買い替えていた気がする。クリームやら何やらも揃えて、“自分好みのいい感じに育てていくんです!”とかほざいていたような」

「あー……そう言えばそないなコト言うてたなぁあのコ……」

「は?」

「い、いやいや!じゃあネクタイは?!来年から社会人てこちらのお兄さんが言うてはりましたけど、社会人になったら何本あってもいいもんでしょ!」

「そうだねーネクタイはあると助かるねぇ。定番色はもちろん、ちょっと遊んだネクタイがあってもいいかも」

「……ネクタイか。それはいいな」

「「おっ!」」

「アイツ今2本ぐらいしか持ってねぇもんなぁ……社会に出るんだからもうちょい持ってた方がいいよな」

「「うんうん」」

「ネクタイだったらいつも行くスーパーの二階に売ってるし」

「「えっ」」

「おっ、そういえば最近は百均にもネクタイがあるんじゃなかったか?ちょうど覗きに行こうと思っていたタイミングだっ――」

「「ちょっと待った!!!」」

「何だよさっきから声揃えて。仲良しか」


 突然声を荒げた二人に驚きつつ、皿に残っていたトマトとしらすの乗ったブルスケッタとやらを口に入れた。うん、シンプルな味付けながらこれも美味い。やはり森永を一度寄越すべきだろうか。店が店だけに喜んでくるんじゃないか?
 と、こちらは美味いツマミを堪能しているのに、隣で磯貝が辛気臭い溜息を吐いている。
「もう……宗一君ったらどうしてそんなに森永君に冷たいの……」
「はぁ?どこがだよ。ちゃんとネクタイを渡せばいいんだろ?百均で探して」
「だからその百均が問題なのであって……」
 なおもブツブツ磯貝は呟いているが、店員は店員で「これはエンゼル君も大変やわぁ」としみじみとしている。誰のことを言っているのか知らないが、エンゼルとはまた珍妙なあだ名をつけられたものだ。顔を知らないエンゼルとやらに少し同情する。
「仕方ない、これはかなこちゃんに出てきてもらおう」
 というと、磯貝は素早く携帯を取り出して耳元に押し当てた。
「おいまさかその電話の相手、」
「ん?かなこちゃんだけど?」
「はぁ!?何でかなこが関係あるんだよ!」
 つうかコイツ今、通話履歴の中からかなこの番号を呼び出さなかったか!?
「なくはないでしょ。兄さんが恋人に、」
「同居人だっつってるだろ!」
「はいはい、その同居人に百均のネクタイをプレゼントするなんて聞いたら、かなこちゃんならその有り得なさに卒倒しちゃうよ」
「お前が言わなきゃいい話だろ!」
「まさか。俺がこんな面白いことを黙ってられるわけないじゃん――あ、もしもし?かなこちゃん?」
「やめろこの野郎ぉぉぉおお!!」
「ちょ、お客さん落ち着いて!!」



 かくして話の全てはかなこに知られることとなり、磯貝の予言通り卒倒しかけたかなこからしこたま説教をくらった。曰く、日頃の感謝の気持ちを表すべきタイミングを無駄にするなということらしい。モノの良しあしで感謝の度合いを測るほど自分も森永も狭量ではないと抗議はしたが、ものの見事にスルーされた。そのわが妹ながら見事なスルースキルに驚く反面、磯貝の影響を心配してしまう。いつか磯貝は抹殺せねばならないだろう。







 *

 そんなこんなで用意した(させられた)森永へのプレゼントが、いま目の前のガラステーブルの上に置かれている。深い深いバーガンディーの箱にサテン地のネイビーのリボン。中に納められているのは書きやすさを重視した万年筆で、一緒にデパートに行ったかなこも太鼓判を押したモノだ。まぁ、確かにこの濃紺の万年筆は適度に太さもあるので、手のデカい森永に似合わんことも、ない。
 そんな手のデカい森永は風呂に入っており、こっちがこんなプレゼントを用意しているなんざ全く予想していないだろう。きっと帰りにコンビニで買った高めのビールでお祝いするだけの誕生日を想像しているはずだ。風呂に入る前は何やらツマミも作っていたようで、鼻唄をうたいながらキッチンに立ってたな。

 ツマミと言えば。

 あのゲイバーの店員、なんで俺の恋人(実際は違うが)前提の話だったのにネクタイをチョイスしてきたのだろう。
 普通恋人と言えば女性を考えるだろうが。ああいう店だから俺もそういう指向だと思われたのだろうか。もしそうだとしたら、磯貝は本気で消さなければならないだろう。あんなヤツ、生きていたところで百害あって一利もない。


 なぁにが、“恋人”だ。


 そんなことをツラツラ考えていたところ、廊下の方でドアの閉まる音がした。どうやら森永が風呂から上がったらしい。
 柄にもなく、僅かに脈が速くなる。テーブルに置かれた長方形の小箱を隠したいような投げつけたいような、いっその事自室に籠ってしまいたいような。普段にない自分の心境にオタオタしてしまう。

 きっと直前に変なことを思い出していたからだろう。

 “恋人”とかそんなのじゃない、森永は“後輩”であって“同居人”でもある男で、決してそんな甘やかで華やかな関係ではないはずだ。そう、“駄犬”と“飼い主”という主従関係でもあって――






 リビングに続くドアノブがカチャリと回った。



 思わず握りしめた小箱がコトリと音を立てる。







「おい、森永っ」












 ――“後輩”兼“同居人”兼“駄犬”であり、何やらそれだけの関係でもないような森永が嬉しさのあまりにでろんでろんに溶けた顔を見せるまで、あと一分。













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