Closing Ceremony ーDaytimeー

今日が卒業式の大学も多かったはず、ということで、初めての投稿は卒業式ネタで。
初、投……稿……?……ながっ((((;゚Д゚)))))))!!!!自分怖い!!!!

ただひたすら長くて萌えもあまりない駄文ですので、
「初投稿か。どんなもんかみてやんよ( ´,_ゝ`)プッ」
という心の広い広い方のみご覧になってください。。。
そもそも誰も見てないだろう☆という気持ちであげていますが、念のためのご忠告でした(・ω・)ノ


よろしくお願いいたします。









「じゃあ、巽先輩、ちょっと出てきます」
「一時間ぐらいで戻ってきますんで」
「あー、森永に会ったらおめでとうと言っといてくれ」
 顕微鏡から目を離さず片手をあげる。出入り口の引き戸が開いて、閉まる音がした。
 暫く倍率を変えて覗いていたが、一通り見終えて背筋を伸ばす。少し背中が凝った。ついでに首もぐるりと回し、先ほど後輩たちが出て行った方向に視線を向ける。
 今日は大学の卒業式・修了式だが大抵の研究室は通常運転だ。研究室の入っている建物は式の行われている講堂と離れているから、ここまで喧騒は届かない。

(が、やっぱり人が少ないかな……)

 平時であればもう少し人が行きかう研究室前の廊下も、今はシンと静まり返っている。こっちとしては静かな方が集中できるのでありがたいが。
 肩を軽く揉み、実験を再開させる。助手の二人が戻ってくるまでに進めておきたい工程があった。
 

 今日主役の一人である同居人は、昨夜遅くに研修先から帰ってきた。
 式の翌日にはまた浜松にとんぼ返りの予定となっている。
「……なんでまだ働いてないのにこんなに研修があるんですか……」
 帰ってくるなり宗一をぎゅうぎゅうに抱きしめながら森永が泣き言をこぼす。
「あと一週間ちょいで入る会社じゃねーか、我慢しろ」
 出迎えた瞬間に抱きしめられた宗一の方こそ文句を言いたいところである。こういうときのバカのバカ力には敵わないことは学んでいるので、早々に抵抗を諦め、犬に接するように髪をわしゃわしゃと撫でてやる。
「今日は久しぶりに自分のベッドで寝れるんだから、明日に備えてさっさと休め」
「自分のじゃなくて先輩のベッドがいいです……」
「ん?自発的にベッドに横になるのと俺が床に沈めてやるのとどっちがいいんだ?」
「……」
 大型犬はイヤイヤするように宗一の肩に頭を擦りよせた。ぐすんと鼻まで鳴らす始末だ。
 まぁ確かに就職が内定してからというもの頻繁に研修が入って大変そうではあるが、4月からはそれが日常になるのだから慣れるためにもいいじゃないかと思う。
「早く離れねぇと実行するぞ」
 そう凄むと、漸く腕の拘束が緩んだ。素早く身体を離して項垂れている森永を一瞥すると――驚いた、コイツ本当に涙目になってやがる。
 今回の研修よりきつい日程は他にもあったし、宗一の暴君っぷりが標準装備であることは森永が一番(身をもって)知っているはずなのに、何をそんなにしょぼくれているのか。
 思わずぽかんとする宗一の前で、森永の大きな瞳は更に潤んでいく。
「……俺、明日行きたくない……」
 項垂れたまま、ポツリとそう零す。先ほどまで宗一をきつく抱きしめていた腕は、所在なく身体の側面に下げられている。
「……卒業、したくない……」
 なんだこいつ疲れがすぎてアホになったか。いや、もともとアホだった。
「今日、会社の人たちが、学生生活の思い出話をしてて……あの頃は楽しかったとか、バカばっかりやってたとか……」
 ぐいと手の甲で潤んだ目元をぬぐう。
「懐かしそうに話すの聞いてたら、あ、もう俺も大学生活が思い出話になっちゃうんだって……こんな風に懐かしむようになるのかな、先輩と実験したことも懐かしくなっちゃうのかなって……新幹線の中でそう考えたら、急になんか……寂しい、って…なっちゃっ、て……」
 最後の方は涙声でぐずぐずに崩れていた。何が引き金だったのか、帰りの新幹線で感傷的なモードに入ったらしい。
こういうときになんと言葉をかけたらいいのか、宗一にはわからない。ほっといてもいいのだが、この状態の森永を放置しておくのも寝つきが悪い。
 視線は床に落ちたままの森永を暫く眺め、ふん、と一つ、ため息のように鼻息をならす。
「じゃあ家でも実験すっか」
「……え?」
 漸く森永の顔があがった。
「お前、俺と実験したいんだろ?じゃあ器具をウチに持ち込んで、簡単な計測は家でやるようにするか」
「え?……え?!い、いや、違います、俺がいいたいのはそういうことじゃなくて――」
「じゃあどういうことだよ」
 全く手のかかるヤツだ。
「思い出して寂しいって思うんなら、思い返す暇もないぐらい新しい記憶を上書きすればいいだろ。俺との実験がそうなら、もっといい実験の思い出を作りゃあいんだよ」
 全く情けない。優秀な頭脳を持っているこの男がなんでこんな当然のことにも気が付かないのか。こんなことを俺に説明させるなんだなんて……二度目があると思うなよ。
 唖然とした表情の森永をキッと睨んでやる。
「あの頃は良かった、よりも、あの頃以上に今が良い方がいいだろうよ」
 片方の耳を掴んで引き寄せる。

「懐かしむ暇があったら前をみろ」

 そう、耳の中に直接注ぎ込んでやった。

 パッと手を放し、すぐ傍の森永の顔をみる。相変わらず間抜けヅラを晒しているが、少しずつ目がキラキラしてきたようにみえる。
 もう一度鼻をならし、さっさと自室に戻ろうと背を向けた。と、背後から長い腕が伸びてきて捕えられる。また森永の腕の中に逆戻りだ。
「――ありがとうございます……」
 反射的に肘打ちをくらわそうと思ったが、寸でのところで堪える。腕は軽く回されているだけなので容易く振りほどけそうだったが、なんとなく、そのままの状態でいさせてやった。
「ごめんね、うじうじして」
「……おう。わかったならいい」
 耳元で感じる呼気で、森永が微笑んだのがわかった。擽ったくて、身を捩る。
「わかったなら、もう休め。明日、式に出るんだろ?」
「はい、山口たちと約束してるんで。先輩はちゃんと式に出てた?」
「まさか。学部のときも修士のときも実験してた」
「デスヨネー」
 背後でクスクスと笑う気配に、もういいだろうと森永の拘束を振りほどく。くるりと正面から向き直ると、もう森永の目元に水気はなかった。帰ってきたときは分かりやすいほど落ち込んだ表情をしていたくせに、今は口元に柔らかい線を浮かべ、愛おしげに宗一を見つめている。なんとなく気恥ずかしくなって、宗一の方から目をそらした。
「じゃあ、俺は寝るから」
「はい、俺も風呂入って寝ます」
 今度こそ自室へ、と思ったのに、森永の両手が宗一の顔を包んだ。そして流れるように優しく口付けられる。
「おやすみ、先輩」
「〜〜〜〜!!おやすみッ」
 なぜかキスを拒否できなかったことを恥ずかしく思い、顔が真っ赤になったのを自覚しつつ今度こそ森永に背を向けた。一目散に自室に逃げ帰ったので、森永が蕩けたように微笑んでいたことを、宗一は知らない。


 あと少しで気がかりだった工程が終わる、というところで、出入り口の開閉音がした。
「おかえり」
 音のした方向を見ずに、そう声をかけた。しかし、いつもなら返ってくる返事が聞こえてこない。訝しげに目線を上げると、出入り口近くの壁にもたれている森永の姿があった。
「え、お前、式は……?」
「終わりましたよ、ついさっき」
 壁から身を起こし、宗一の方に近づいてくる。
「それにしたって早くねぇか?ちゃんと田所たちに会ったのかよ」
「あー、どこかにいるだろうなとは思ったんですけど」
 宗一の隣に並び、顔を覗き込む。
「早く先輩に会いたくて」
 ~~~またこのバカはっ!!!
 真っ赤になって眉間に皺を寄せた宗一が口を開く前に、
「先輩、ありがとうございました」
 真っ直ぐに視線を合わせ、森永がいう。
「先輩と出会えて、本当に幸せな6年間でした。いくら感謝しても足りないくらい、感謝してます」
 それを、真っ先に伝えたくて。
 目をみれば森永が心からそういっていることがわかり、気恥ずかしくなった。
 深い慈しみと愛情のこもった眼差しを向けられている。
「お、俺は別に何も――」
「そんなことないです。俺、二回も大学を辞めようとしたのに先輩が引き留めてくれて……」
「いや、だってあれはどっちとも俺が関係してるっていうか不本意ながら原因俺じゃねーか」
 まぁそうですけど、と森永が口元を緩ませる。
「昨日言ってくれたこと、嬉しかったです。俺、なんかすごくネガティブになっちゃってて……」
 手を伸ばし、宗一の頬に軽く触れる。
「今までの6年間より、これからの未来の方が長いのにね」
 そういって、擽ったそうに微笑む。確かに宗一が昨日伝えたかったことはその通りなのだが、他人の口から聞いてみればなんと意味深な発言をしてしまったものだと遅蒔きながら気がつく。しかし一度出した言葉は戻らないし、撤回するつもりも、ない。
「先輩を好きになって本当に良かった」
 ひどく真剣な顔をしてそういうものだから、頬に触れる森永の手を払うことができない。これ以上はまずい、もうすぐ助手の二人が帰ってくるはずだ。なのに、ゆっくりと、森永の顔が近づいてくる。鼻先が触れる距離でピタリと静止し、囁く。

「先輩、好きです。心から。ずっと傍に、いさせてくださいね……」

 ガラガラガラッ、

「ただ今戻りましたー!森永先輩会えませんでした〜」
「人が凄かったんですよー、もう真っ直ぐに歩くことすらできな……え、森永先輩?!」
 研究室に戻った助手二人の目に入ったのは、スーツ姿で作業机に突っ伏している森永と入り口に背を向けて実験を続けている宗一の姿であった。
「いつの間にこっちに?!探したんですよー!」
 後ろでやいやい騒ぐ後輩たちには一瞥もくれず、宗一はひたすら手元に集中した。耳が熱くなっているのがわかるが、努めて意識しないようにする。心臓がバクバクしているのも、もちろん無視だ。
「そうだ、写真とりましょう写真!」
「誰かに頼みま――」
 トントン、ガラガラガラッ、
「森永いますかぁ〜?」
「「山口先輩ナイスタイミングですー!!」」
 助手たちがタイミングよく現れた山口の方に駆け寄る間をついて、森永が宗一だけに聞こえるようにいう。
「先輩、俺これから謝恩会なんですよ。で、そのあと山口なんかと飲み会なんですけど、明日も研修だから早めに抜けてきますんで」
「……だからなんだ」
「さっきの続き、帰ってからしましょうね。卒業プレゼントくださいね」
「は?!!!」
 思わず宗一が森永をみると、男は屈託のない笑顔を浮かべ見つめ返してきた。
 写真の準備ができたと呼ぶ声に、拳を握り締めるタイミングが遅れる。それ幸いと逃げ出す森永の背中に蹴りを食らわそうかと思ったが、さすがに背中に靴跡をつけた姿で謝恩会に行かせるのはあんまりかと一瞬躊躇ったタイミングで、助手たちに早くフレームに収るよう急かされた。
 
 何が卒業プレゼントだ、今出しそびれた拳を贈ってやる。
 
 いそいそと隣に並ぶ馬鹿犬の顔を苦々しく見やり、そう決意した。
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