傘と笑顔と

 今日はわんわんデーでもあり傘の日でもあります。
 なので突貫工事でこんなお話を妄想してしまいました。
 短時間で書いちゃってるので誤字脱字、妙な言い回しは見逃してやってください…(´;ω;`)後で書き直しに参ります…


 今回のお話は傘の日に因んでと思って書き出したものの、あんまり傘活躍してません(えっ)
 たんにバカっぷるを書きたかっただけなんです…。


 ではでは、よろしくお願いいたします。








 集中が途切れた瞬間、窓の外の雨音に気が付いた。
 膝に広げていた雑誌から視線を外し、リビングの掃出し窓の方に向ける。
 カーテンを閉めているのでどれぐらい降っているのか正確にはわからないが、その音からして傘なしではキビシイように思える。天気予報では今夜は雨が降るといっていたか。

 壁の時計をみる。もう少しで23時になるところだ。確か森永は23時台に駅に着くのではなかったか。
 ローテーブルに置いていた携帯を開き、メールフォルダの一番上にあったメールを確認する。

〔 題名:今から帰ります!  本文:やっと終わりましたぁ~~!この二週間、先輩に会えないのが本当に辛かったです。先輩のいない生活なんて俺にとっては(中略。意識的に自分の目が文字の判読を拒否。)23時半頃に駅に着くと思うので、先に休んでて下さいね。明日は休みなのでゆっくりべったりねっと(以下略) 〕

 何が先に休んでて下さい、だ。アイツが残業だ研修だ出張だで帰宅が遅くなったとしても、自分が先に休んでいたことなんてないじゃないか。まぁたまにソファーで寝落ちして帰ってきた森永に青い顔で起こされたこともあるけど。


 玄関のドアを開けるまでは疲れた顔であったであろう森永が、自分の「おかえり」の一言で綻ぶような笑顔を見せるのが結構気に入っている。


 なんてアイツにいったら調子に乗るのが目に見えているので、死んでもいってやらないが。


 窓の外の雨は当分の間やみそうにない。
 出張帰りのアイツはおそらく荷物が多いだろう。
 駅からアパートまでタクシーを使うほどの距離ではないが、この雨では仕方がない。
 

 時計を見る。23時になった。

 雑誌に目を戻す。自分の研究分野の特集記事なのに、視線が上滑りして内容が頭に入らない。

 雨の音が、心なしか強くなった気がする。
 


 諦めて雑誌を伏せた。






 最寄駅ホームに降りた時、思っていたよりも雨足が強い事に気付かされた。
(傘持ってないんだよなぁ……コンビニで買わなきゃ)
 ガラガラと重いスーツケースを引きずり、駅1階の改札に向かうべくエスカレーターに乗る。電車の乗客は週末の最終間近の割に少なかった。この雨のおかげで早めの帰宅を選択する人が多かったのかもしれない。
(先輩、もう寝たかな……)
 この2週間の出張の間、自分の方は毎日欠かさずメールを送っていたが、愛する宗一からの返信は3回に1回がいい方で、下手すれば一日中返信を寄越さないこともあった。電話もしかりで、毎晩決まって23時に携帯を鳴らしていたのだが出てくれたのは片手に数えるほどの回数で、トータルの通話時間は5分にも満たない時間だったと思う。
 まぁもともと携帯が苦手な人だから、それぐらいのことで凹むような自分ではない。宗一の性格にはもう慣れたし、そこも含めて好ましく思っている。それにそういう対応だからといって宗一が自分に無関心ではないことも承知しているから。
(もしかして、今日も起きて待ってくれてるかな)
 宗一はどんなに自分の帰りが遅くなったとしても、必ず起きて待っていてくれる。
 たまに寝落ちしていることもあるが、一言「おかえり」といってくれるだけでどれだけ自分が癒されているか。
 今日はそんなに時間も遅くないので、きっと宗一はリビングで読書でもしながら自分の帰りを待ってくれているに違いない。
 メールでこそ先に休んでいてくださいねといったけど、本心としては起きて自分を出迎えてほしい。
 そんなこと、あまりに子供っぽくて口に出せないけど。

 宗一のことを考えると自然と顔が緩んでくるものの、さすがに今日は疲れた顔をしている自覚がある。出張先での打ち合わせが終わったのは今日の午後遅くのことで、そこからすぐさま静岡に飛んで本社に向かい、報告を終えて新幹線で名古屋に帰ってきた。会社側は無理せずもう1泊してこいといってくれたけど、自分としてはどんなにハードになっても一日でも早く宗一に会いたかった。
(ちょっとトイレに寄って、顔洗ってから帰ろうかな……)
 少しはシャキッとした顔になるかもしれない。

 そんなことを考えてるうちにエスカレーターは1階に到着した。人の流れに自分もならい、改札へと足を向けた。






 電車が到着したのだろう、人が2階のホームから流れてきた。
 改札を通る人の中に、うちの駄犬がいないか目をこらす。
 23時半頃の電車といっていたので、きっとこれに乗ってきたはずだから。
 メールで確認すればいいようなものだけど、なんとなく気恥ずかしくてそれはしなかった。だってそれではまるで自分が森永の帰宅を心待ちにしているようだったから。

 まばらな人影の中に、ひときわ背の高いスーツ姿の男がみえた。重そうなスーツケースを引きずり、顔には隠しきれない疲労の色が見える。普通にしていれば人目を惹く容姿なのはわかっていたが、普通にしていなくても人目を惹くヤツらしく、仕事帰りであろうOLが、チラチラと森永の横顔を伺っている。学生風の女子二人組も、なにやら頬を染めて森永の方を見て囁きあっているではないか。あんな疲れた顔みてなにがいいんだか。
 森永が改札に近づいたのを見計らい、寄りかかっていた壁から身体を起こした。まさか迎えに来ているだなんて思っていないだろうから、面倒なことだがこちらからアイツに近づいていかなければならない。
 と思っていたのに、森永が何かに呼ばれたようにこっちを向いた。誓って、自分は声を出していない。


「……!!!!!!」


 まさに大輪の笑顔が咲いた、と表現していいだろう。自分を見つけたときの森永の表情の変わりようといったら。
 それまで疲れた様子を隠そうともしなかったその顔は、一変して満開の笑顔に変化する。その蕩けたような笑顔は外で見せるにはいささか不適切なシロモノで、周囲の人たちが目を丸くして(大方の女性は見惚れて)いる。おかげさまでその笑顔を一身に向けられている自分としては甚だ居心地が悪い。外でそんなふにゃけた顔してんじゃねーよ!!

「すぇぇぇぇえんぱぁぁあああい!!!!」
「寄んな変態ッ!!!!」

 案の定飛びついてこようとした駄犬の前に傘を剣のように突き出した。傘をこんなふうに使うなんてもってのほかではあるが、自分と森永の間においては時たま武器(主に自分の)として使われることがある。しかし駄犬は怯まない。
「む、迎えにきてくれたんですか?!?!」
「雨がひどかったし、俺もコンビニに行きたかったからそのついでだ!」
 尻尾を千切れんばかりにふっている同居人の前に再度傘を突き出す。今度は通常の持ち方で。
「ん」
「ありがとうございます……っ!」
 相変わらずヘラヘラした顔で、突き出された傘を丁寧に押し頂く。無事受け渡しが済んだので、自分の仕事もこれで終わり。とっとと出口に向かって歩き出した。
「ちょ、先輩まって!」
 慌てた森永がスーツケースを転がしてついてくる。先ほどまで引きずるようにしていたクセに、なんと現金なことか。
「ごめんね、わざわざ……傘買わないとな、って思ってたんです」
「だからコンビニ行くついでだといってるだろ。てかタクシー使えよこういうときは」
「えーだってワンメーターもいかない距離ですもん、もったいなくて」
 そんな会話をしていたら出口に着いた。着いてから気がついたのだけど、先ほどまでの雨は嘘のようにやんでおり、頭上の夜空には雲の切れ間から星空が覗いているところさえある。
「……なんだよ傘いらなかったじゃねーか」
「本当ですね。――だけど、」
 森永が顔を覗き込んできて


「俺は早く先輩に会えて嬉しかった」


 といって、再び蕩けそうな笑顔でこっちを見つめるものだから。


「〜〜〜うっさい馬鹿!!」
 至近距離で怒鳴ってやって早足で歩き出した。まっすぐアパートに帰るその道が、駅まで出てくることの口実としていたコンビニとは逆方向だと気付かずに。
 自分の早足に慣れている森永はすぐに追いつき、ニコニコしながら隣に並ぶ。
「せーんぱいっ」
「……んだよ」
「大好きです」
「うるせぇ」
「帰ったらお礼のちゅうさせてください」
「家に入れん」
「俺、明日休みなんです。先輩もお休みですよね」
「だからなんだ」
「イチャイチャしましょう」
「その前にお前を殺す」
「先輩、俺、幸せです」
「よかったな」




 二週間ぶりの実にくだらない会話をしながら、自分たちの住む家へと並んで歩く。仏頂面の自分と締まりのない笑顔の森永。お互いの手には閉じられた傘。
 傘は結局無駄になってしまったけど、少しだけ早くあの顔が――森永の顔が見られたから、今日のところはまぁ良しとするか。

 しかしあんなに注目を浴びるとは思っていなかったので、今後コイツを駅に迎えに行くことは絶対にしてやんねぇと心に誓った。




 他のヤツらに、あんな笑顔みせてやるもんか。
 






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No title

迎えに行くって大好きなんです
以前雪の中を兄さんが迎えに行くのを読みまして
それが大好きでした
今そのブログは休止中で読めないので紹介出来ないのですけど…
いつも素敵なお話をありがとうございます♪

Re: ありがとうございます〜☆

ミナトさま
こちらこそ、ご訪問いただきましてありがとうございます!
雪の中のお迎え、いいですね〜。
自分からお迎えにきたくせに「あーさみぃ」とこぼす兄さんと「俺の心はぽっかぽかです!」とデレデレな森永君の姿が見えます。
あーちょっと妄想するだけで萌えてしまう…。笑
今そのお話が読めないのが残念です( ; ; )
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