夏の名前 1

 連日熱戦が繰り広げられているオリンピックも折り返しを過ぎましたヾ(・∀・)ノ
 今回は日本のメダル数がスゴいですね。確実にロンドン大会の総数を超えるのでは。
 残り5日、応援せねばです\(^o^)/


 以下、前回の記事に鍵付きでコメントを下さった方へのお返事になります。

  8月11日にコメントを下さったお客様
 ありがとーうございま〜〜〜す\(^o^)/!!!※心の声返しです

  8月12日にコメントを下さったお客様
 喜んでいただけて何よりです〜(*ノ∪`*)変なスイッチ押しちゃいました?やっぱりEROの力は絶大ですね!夏のEROは最高です!



 さて今回のお話は連載モノになります。時期的に8月上旬のお話だと思ってくださいませ。そしてオリジナルのキャラが出てきますので苦手な方はご注意ください。第一回目の今回はかなり説明ったらしいです(´・_・`) 反省してます。


 ではでは、よろしくお願いいたします。







 
「はい、焼きそば2つお待たせしました」
「?!あ、ありがとうございます!」
「――わ、わぁ、美味しそうだねっ」
「ふふ、美味しいですよ〜。ごゆっくりどうぞ」


「……ね、今の店員さん、めちゃめちゃカッコ良くなかった?」
「ん、思わず見惚れてしまった……あんな人が海の家にいるなんてズルくない?」
「思わぬところにイケメンっているものね……もう一度お話したいなぁ」
「……あとでかき氷食べにこよっか」
「そうしよ」




「森永くーん、3番テーブルにカレーお願いしまーす」
「はーい」
 テーブルを拭いていた手をとめ、カウンターに向かって返事をする。時間的に昼のピークを過ぎたので漸く注文も落ち着いてきた。昔ながらの、といった趣の店内に残っている客は3組だけ。今声のかかったカレーを運べば自分も昼食にできそうだ。
 空いた皿とグラスをお盆に載せ厨房に入ると、いかにも海の男然とした風貌の店長が突然抱き付いてきた。
「森永君っ!ほんっとーうに助かってるよ!ありがとうね!」
「わわわ店長!お皿が落ちますからっ!」
 いくらゲイといえど、男なら誰でもいいというわけではない。自分は細身色白かつ引き締まった腰を持つ、目元の涼しい和風美人がタイプだ。タイプというか、巽宗一という人物に出逢ってからは彼以外の男は目に入らない。
 お盆を頭上にあげておたおたしていると、ひょいとそれが取り上げられた。代わりにズシリと重量のあるものが載せられる。
「はい、3番テーブルの大盛りカツカレー。零さないようにね」
 取り上げられたお盆を手にニッコリ微笑むのは、自分好みの目元の涼しい和風美人、かつ細身でおそらく引き締まった腰の持ち主。因みにその顔にはアンティークなところがお気に入りだという丸メガネがかけられていて、薄い色素の長髪はシニヨンに結わえられている。初めて顔を合わせたときはあまりの激似っぷりに1分以上凝視してしまった程だ。

「哲博君?」

「あっ、はい、わかりました!」


 愛しい人と違うのは、その小麦色の肌の色だけ。





 あらたまった口調で松田がそれを切り出してきたのは7月の下旬頃だった。宗一と夕飯にお呼ばれしたとき、松田がその人の良さそうな顔を曇らせながら
「宗君、前に皆んなでペンションに遊びにいったのを覚えているかしら?――そうそう、海水浴場の近くの。あそこは私のお友達のご夫婦がやっていたのだけど、今は息子さん夫婦に譲られて忙しいときだけお手伝いをされているのね。いつもはそれで夏の繁忙期も乗り切っているんだけど、どうやら今年は人手が足りないみたいで」
 というのもお嫁さんが出産のために里帰りをしているらしい。そして夫である息子さんも出産の立会いを希望しているそうで、
「予定日の前後一週間ぐらいお嫁さんのところに行きたいといってるそうなの」
「ということは、二週間ぐらいってとこですね。お嫁さんの実家は遠方なんですか?」
「それがイギリスなのよ」
「「イギリス」」
 じゃあ生まれてくる赤ちゃんはハーフなんだね!と無邪気にかなこがはしゃいでいるが、それならば二週間ぐらいは期間が欲しいのも納得だ。
「それで相談なんだけど……もし都合がつけば、そのペンションのお手伝いを森永君にお願いできないかしらと思って」
「へ?俺、ですか?」
 意外な申し出に驚いたものの、期間を聞けば特に内定先の研修が入っているわけでもないし、バイトの変更も都合がつきそうな感じではあった。唯一気がかりなのは
「先輩、大学の方は俺が抜けても大丈夫ですか?」
「まぁこの時期はもともと急ぎの実験は入れてないからな。盆前だと教授たちもいないし試薬も届きにくくなるし。大丈夫なんじゃないか」
 これで決まりだった。早速、と松田が友人に連絡するために立ち上がる。
「お友達には家事がばっちりな上に気が利くとても良いコを知ってる言ってたのよ。森永君が引き受けてくれて良かったわ」
 宗君もありがとうね、とにこやかにほほ笑むと、松田は電話の置いてある部屋へと去っていった。
「……なんで俺がお礼を言われなきゃならんのだ」
 どこか憮然とした口調で宗一が呟くと、「もう、兄さんったら、」とかなこが芝居がかった仕草で肩を竦める。
「兄さんの大切な相棒を二週間借りちゃうんだよ?そりゃあ松田さんも兄さんにもお許しを貰わなきゃって思ったんだよ。それに森永さんがいないと兄さん生活できないでしょ?だから森永さんがいない間はこっちに泊まってね」
「ばっ……!!コイツが研修とかで二週間いないことなんて過去にもあったわ!ちゃんと生活できる!」
「本当かなぁ~?この時期は暑いからって平気でご飯抜くでしょ~?」
「ぐっ……!」
「せ、せんぱいっ……大切な相棒ってのは否定しないんですね……!」
「あぁん?!じゃかしいわクソボケ森永ぁぁぁあ!!!」
 気が付けばいつの間にか松田が居間に戻ってきており、宗一に足蹴にされている自分をみて「まぁまぁ」とにこやかに微笑んでいる。宗一と同居するようになって何度も遊びにきているうちに、だいぶ宗一と自分の力関係について見慣れてきたらしい。あまりにも目に余るようなら諌めてくれるだろうが、大抵は「あらまぁ」の一言で治めるあたり、松田はかなりの大人(たいじん)だと思う。
 こんな風に身内でもなんでもない自分を快く受け入れてくれている松田のためなら、2週間程度宗一と離れるのも我慢できる。自分でよければ力になりたいと、心から思った。




「森永君、今日はもう上がってもらって大丈夫だよ。今日はペンションの方もお客さんが多いんじゃない?」
 昼食を食べ終えて一息ついた頃、店長からそう声をかけられた。今日はバイトにきて初めての週末だ。浜辺の賑わいに比例してペンションの予約も満室で、こちらの手伝いが終わり次第急いで戻ってきて欲しいと言われている。
「あ、いいですか?じゃあお言葉に甘えて戻りますね」
「甘えてるのはこっちのほうだよ。すまないね、空き時間とはいえ手伝いをお願いしちゃって……本当に助かってるよ」
 両手で拝む店長に「いえいえ、お気になさらず」と手を横に振って微笑む。こっちだって、空き時間を有効活用できてありがたいのだ。身体を動かすことは嫌いじゃない。

 松田の友人夫婦(の息子夫婦)が営むペンションは、最寄りの駅から2時間程度の場所にあった。近くには自分も同期連中と遊びにきたことのある海水浴場があり、そのため海岸沿いには民宿が数件並んでいる。ペンションはそこから少しだけ離れた林の中にあるので前に来たときは気が付かなかったが、ログハウス調の外観は周囲の景色に溶け込んでいてとても好ましい。海水浴目的の若者ではなく、休日をゆっくり過ごしたい大人向けのペンションといったところだ。
 笑顔で出迎えてくれた夫婦は松田よりも少し年上に見えた。松田の友人らしく穏やかで上品な夫妻は、まさにこの落ち着いたペンションの雰囲気が似合う。幸いなことに自分は年配の方からの受けはいい方だと思うので、これは気持ち良く過ごせる予感がした。肝心の仕事内容も自分の家事スキルからして十分対応できるもので、感覚的には普段の家事の量が増えた程度。松田が身内の宗一でなく自分をバイトにと薦めたのも納得だ。量以外で普段と違うところといえば、忙しい時間が極端にはっきりとしているといったところか。ペンションの仕事が忙しいのは午前中と夕方の時間帯であって、昼間は結構ゆっくりとできる。家事をして大学に行って……という普段の日々よりも余程ゆっくりした日常かもしれない。
 そこでバイト2日目にして何か他に手伝いができないかと申し出たところ、もし体力に余裕があるならという前提の下、この海の家のバイトを紹介された。というのも、本来バイトに入るはずだったコがすぐに来られなくなり、この繁忙期をもう一人のバイトと二人で回さなければならないと店長が嘆いていたことを夫妻が覚えていたのだ。

 そういった経緯で、午前中の仕事が終わり次第こちらの手伝いをしているわけだが――




(まさか先輩のそっくりさんがいるとはなぁ……)

 無意識に目で追ってしまっていたのか、拭いたグラスを仕舞っていた宗一のそっくりさん――由良陵介がこちらを向いた。
「ん?哲博君、何か?」
「あっ、いえ、何も」
 由良はふわりと微笑んで、中断していた作業に戻った。フリーターと聞いているが、歳はそれほど変わらないだろう。Tシャツにコットンのハーフパンツ、おそらく肩甲骨付近まである長い髪は一つ結びではなく低い位置にシニヨンでまとめられている。確かに一つ結びよりは項が露わになるこの髪型の方が涼しいのかもしれない。

(髪型はともかく、先輩と同じ顔で“晢博君”呼びをされると正直戸惑っちゃうんだよな……)

 骨格が似ているからか声も近いものがあるが、宗一の声の方がより低音だ。まぁドスの効いた声を聞き慣れているからかもしれないが。
 顔合わせの際、ガン見してしまった自分を由良は物珍しげに眺めていた。数分の金縛りが解けたあと失礼を詫び、由良が身近な人に似ていることを話すと、「なんだ、あんまりにも熱っぽく見つめるから一目惚れされたかと思った」と言われたときはなんとも気まずかった。

(そんなつもりはなかったんだけどなぁ。俺は先輩の見た目だけじゃなくて中身にも惚れてるんだから……簡単に心が動かされたりはしませんよ)

 その肝心の中身であるが、宗一と由良は真逆といっていいほど異なっている。知り合って日が浅いものの、由良が穏やかな性格であるのはわかる。間違っても、日常的に鼻血が出るほど顔面を殴りつけるようなことはしないだろう。

(あれ、そうなると俺がまるでMみたいじゃないか)

 つーかお前はただの変態なんだよ、と宗一が聞いてたら突っ込まれそうだ。
 そう考えると思わず口元が緩んでしまい、その瞬間を由良に見られてしまった。
「何、思い出し笑い?」
「いや、思い出し笑いって言うか妄想っていうか」
 何それ、と声を上げて笑う由良をみて、ますます宗一とは違うなと思う。宗一がこんなに朗らかに笑っていたら、何か変なモノ食べたんじゃないかと心配してしまうだろう。
「じゃ、また明日」
「うん、お疲れ様」
 ちょうど店内に入ってきた客のオーダーを取りに行った店長には目線だけで挨拶をし、由良に見送られて裏口から出た。強烈な日差しの下でもどこか涼しげに見える由良の雰囲気は、やはり宗一と似ている。天使と悪魔、白と黒ぐらいの違いはあるのだが。どちらがどうとは敢えて口にしない(できない)。
 手を軽く振って由良と別れ、ペンションへの帰り路を急ぐ。太陽は中天を過ぎているが、気温が一番高くなるのはこれぐらいの時間からだ。道路のアスファルトも溶けそうなほど熱を帯びているようで、上からも下からもムッとするような熱波を感じる。きっとコンクリートに囲まれた大学の方でも同じぐらい暑いだろう。

(先輩、ちゃんとご飯食べてるかな)

 この二週間は松田家の方でお世話になっているので朝夕の心配はないが、果たしてちゃんと昼食を摂っているのだろうか。実験で無理をしていないだろうか。色々心配で初日からメールや電話を繰り返すものの、普段研修で家を空けているときと同じく返事の頻度は芳しくない。助手たちに尋ねる手段もあるのだが、さすがにそこまでするのは憚られた。
 由良のことも話したいのだが、なんとなく口に出せないでいる。


(早く会いたいな)



 由良を見ていると、どうしても宗一のことを思い出す。
 
 いるはずもないのに、砂浜や海で遊んでいる人の中に宗一の姿を探してしまう。
 
 たった数日離れただけなのに、宗一に会いたくて仕方ない。



 今頃宗一は何をしているのだろう。





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