Enjoy!〜息を合わせて

 何やら急激に冷え込んできましたね。このまま秋が深まっていくのでしょうか。
 さすがにもう30度越えはないと思い…たい(´・_・`)

 以下、前回の記事に鍵付きでコメントを下さった方へのお返事になります。

  10月24日にコメントをくださったお客様
 いえいえ、こちらこそ頂いたコメントに元気を頂きましたよ〜\(^o^)/ありがとうございます!!
 私の四次元ポケットは穴が空いているようで、その辺にポロポロと散らばっちゃうのが悩みです。今回のお話でうまく回収できるかどうか。どうぞ温かい目で見守ってやってくださいませ(^_^)



 さて、体育祭のお話も今回含めて残り2話。
 (前の演目はコチラからどうぞ)
 「10月以内に終わらせたい!」と半ば強引に詰め込んできましたが、結果見直す間もなく長文になってしまいました…大した萌えもないのにぃ( ノД`)
 今回の語り手は再びかなこちゃん、プログラムは3年生によるフォークダンスです。


 ではでは、よろしくお願いいたします。







「ねぇかなこちゃん!」
「なぁに?」
「さっきお手洗いにいったときにかなこちゃんのお兄さんとすれ違ったんだけど、ちょーカッコ良くて見惚れちゃった!」
「……そう」
「すごく背が高いんだね!顔もカッコいいというか可愛いっていうか。かなこちゃんにそっくり!」
 夢中になって話す友達を前にため息を吐きたくなる。
 このコもか。
 兄さん=森永さんと思ってるみたい。
 まぁ確かによく間違われるけれど。




 お昼休憩が終わってテントに戻ると、待ち構えていたかのように数人の友達に囲まれた。
「お弁当一緒に食べてた男の人たちってお兄さん?」
「かなちゃん、何人お兄さんいるの?」
「みんな何歳?お仕事は?」
「一緒に住んでるの?」
 きっと突っ込まれるだろうことは覚悟していたので、あらかじめ用意していた回答を口にする。メガネの2人が兄さんで他の人は兄さんたちの友人、年齢は全員20代で仕事は会社員と学生、同居はしていない、そして既婚者が2人(寧ろ夫婦だけど)、3人は独身だけど皆お相手がいる(磯貝さんはわからないが勝手にいることにした)と話すと、最後の部分で残念そうな声が上がった。

 いやいやいや兄さんたちが中学生とレンアイするなんて想像つかないから。



 お昼のとき、やけにこちらをみている視線が多かったのには気付いていた。それぞれ単体でも視線を集めるようなメンバーだ、5人も揃ってわちゃわちゃしていたら注目を集めてしまうのは当然だったと思う。兄さんたちには言わなかったけど、そもそもスタンドにいるときからかなり目立っているのだ。なぜなら、午前中の短距離走でも先程終わった学級対抗リレーでも、全員が立ち上がって声援を送ってくるから。兄さんたちにつられて松田さんまでもが立ち上がって応援してくれているのには驚いたけど。

(注目の的なんだよねぇ)


 少し恥ずかしいけど、かなり嬉しい。
 



 プログラムは順調に進み、3年生にとっては体育祭のメイン競技といっても過言ではないフォークダンスが近づいてきた。
 さっきまで散々森永さんのことをカッコいいといっていた友達も、今は隣のクラスの何某君を気にしているみたいだ。先程からチラチラと男子のテントに視線が飛んでいる。しかしその友達だけではなく3年女子全体がそんな感じで、テント内にはなんだかソワソワした空気が流れている。連れ立ってお手洗いに行くコはもちろん、なかにはわざわざ鏡を持ち込んでハチマキの位置を確認しているコもいる。一方男子のテントは午前中から同じテンションで騒ぎっぱなしなのに、この差は一体なんなのか。こういうとき、自分と同じ年頃の男の子って精神年齢が低いなぁと思う。普段一番近くで接している男性があの宗一兄さんだから、余計にそう感じてしまうのだろうか。

 そんなことをぼんやりと考えていたら集合がかかった。
「ドキドキしてきちゃった」
 そんなことを呟く友達がとても可愛く思えて、こっちまで少しドキドキしてしまう。確かに、こんなにたくさん人がいる前で男子と手を繋ぐなんて今まで経験したことない。うーん、やっぱり髪とかチェックした方が良かったかな。


 どうやら一つ前の競技が終わったらしく、2年男子の退場に被せて放送部のアナウンスが聞こえてきた。
 他の学校がどうなのか知らないが、この学校のフォークダンスは3年部の先生たちもダンスに加わるし、保護者や卒業生の参加もOKとしている。例年だとこのアナウンスで軽く参加を呼びかけるのだが――。

『――ぜひ保護者の皆様、卒業生の先輩方ふるってご参加ください。そしてぜひぜひ、3年生の皆さんも、会場内のご家族やお友達の参加を呼びかけてください!』

 へぇ、積極的に声をかけていいんだ?今年はいやに要請が強めではないか?
 チラッとスタンドの兄さんたちを見ると、少なくとも「じゃあ参加するか」という雰囲気はみられない。巴兄さんは松田さんと喋ってるし、宗一兄さんは森永さんの頭を叩いている。黒川さんと磯貝さんも何やら話し込んいて、皆まったりとその場の雰囲気を楽しんでいるようだ。
「かなこちゃん、お兄さんたちを呼んだら?」
 先程森永さんに熱を上げていた友達がそう言ってくる。
「ううん、多分兄さんたちはこーいうの好きじゃないと思うから」
 巴兄さんはともかく、宗一兄さんがフォークダンスを踊るだなんて想像つかない。スマートなダンスより武道の演武の方が似合う。どちらも見たことないけど。
「あら、巽さんお兄さんがいらしてるの?」
 いつの間にか隣のクラスの先生が後ろにいた。
「あ、ハイ」
「参加してもらったら?学校側としては参加人数が多い方が嬉しいわ」
「いえ、でも兄たちはフォークダンスとか踊れないと思うし……」
「あら、大丈夫よー。中学や高校で一度はやってるはずだから、こういうのは身体が覚えているものよ。ていうか、兄たちってことはお兄さんのお友達もいらしてるの?」
「はい、えっと、兄が2人にそのお友達が3人です」
「やっぱり……」
「え?」
「いえ、こっちの話。じゃあ5人でいらしてるの?」
「伯母も含めて6人で来てくれてます。結構一生懸命応援してくれてるんで、もしかしたらスタンドで目立ってるかも……」
「いいお兄さんたちじゃない。じゃあきっとフォークダンスにも参加してくれるわよ。さ、呼びに行こう」
 あれよあれよという間に背中を押され、スタンドの前にきた。兄さんたちの方を見れば、何事かという顔でこちらを見下ろしている。
 声が届く距離ではないので、とりあえず両手を上げて下りてきてとジェスチャーをする。途端に宗一兄さんが嫌そうな顔で首を横に振った。
「やっぱりダメみたい」
「もうちょっと粘ってみましょ」
 先生の熱心な応援を受け、もう一度兄たちを呼ぶ。すると宗一兄さんが仏頂面を浮かべながら指で小さくバッテンを作った。そんな宗一兄さんの仕草をみて、森永さんが苦笑いを浮かべている。
「あーこれは無理ですね」
「もういっちょ!」
 なんか先生の方が熱心?
 でもせっかくなので兄さんと踊りたい気になってきた。
「兄さん!来て!」
 声を上げて呼ぶと、今度は腕全体を使ってバッテンを作ってきた。全力での拒否に思わずぶぅと膨れると、一部始終を見ていた松田さんが何か兄さんに進言したようだ。宗一兄さんが嫌そうな顔を隠そうともしないところを見ると、“参加してあげなさいな”と言われたのだろう。
 すると、なぜか磯貝さんが立ち上がって石段を下りはじめた。
「あ、兄さんのお友達が1人参加してくれるかも」
「よしっ」
 宗一兄さんに注目していると、どうやら磯貝さんの行動は宗一兄さんをギョッとさせたようだ。何か喚きながら、慌てて磯貝さんの後を追って石段を下りてくる。そうすると当然森永さんもついてくるわけで。
「やぁかなこちゃん。俺は保護者じゃないけど参加していいの?」
「うん、もちろ――」
「ぜひ!!!」
 わぁ、先生どうしたの。すぐに宗一兄さんと森永さんも追いつき、宗一兄さんが磯貝さんに噛み付いた。
「テメェどういうつもりだ!」
「どういうつもりも何も、保護者じゃなくてもいいみたいだし。せっかくかなこちゃんが呼んでくれてるんだもん、参加しなきゃ男が廃るってもんでしょ」
「お前が廃れろっていうかいっその事滅びろ」
「磯貝さんだけ?巴君と黒川さんは?」
「あの2人は松田さんと見とくってさ」
 森永さんの問いかけに磯貝さんがそうこたえている。巴兄さんたちにも参加してもらいたかったけど、あの2人はまだ時差ぼけとかも残っていそうなので無理は言えない。
 
 とりあえず、

「兄さん、」
「ん」
「下りてきてくれてありがとう」

 そう言うと宗一兄さんはもの凄く不本意そうな顔をしたけど、そのままくしゃりと頭を撫でてくれた。


 さてこの後どうしたらいいのだろうと思っていたら、例の隣のクラスの先生が親切に兄さんたちを誘導してくれるようだった。
「お兄さんたちはこちらにどうぞ!私たちの、いえ、こちらの輪の中にっ!」
「誘導します!」
 あれ、いつの間にか他の先生まできてた。時間がないぞと知らせに来てくれたのだろうか、申し訳ない。周りを見渡せば宗一兄さんたち以外にも参加する保護者の人たちがそこそこいるようで、先生方が手際よく誘導している。ならばとお任せして自分のクラスの輪に行こうとすると、
「おや、巽のお兄さんじゃないですか」
 背後から我が担任である学年主任の先生が宗一兄さんに声をかけてきた。
「もしかしてフォークダンスに参加してくださるんですか?そら嬉しいですわ。巽、お兄さんはウチのクラスに入ってもらえ」
 あれ?何故か隣のクラスの先生たちの笑顔が凍りついたような。
「そちらはご友人ですか?ちょうどいい、若い男性の助っ人が欲しかったので私がお連れしましょう」
「「「えっっっ」」」
「先生方、何か」
「い、いえ……」
「なんでも……」
「ないです……」
 異様に悄気返る先生方(それでも視線は兄さんたちから離さない)の様子が気になったが、グラウンドではすでにダンスの輪ができつつある。森永さんたちのことは担任にお任せし、宗一兄さんの手を掴んでクラスメートのいる輪に向かって走り出した。




 結論からいえば、宗一兄さんはフォークダンスを踊ることができた。やはり身体が覚えているようで、最初こそぎこちなかったものの今は上手に中学生の相手をこなしている。

 目の前で。

「おいかなこ」
「んー?」
「なんで俺が女子パートなんだ」
「だって兄さん、ちゃんと見張ってないとスタンドに戻りそうなんだもん」
 男女パートに分かれていたらダンスが続くにつれどんどん離れていってしまうが、目の前にいてくれたら初めから終わりまで背中を見張っていられる。ということで、宗一兄さんには女子パートに入ってもらうことにした。全体を見渡せば同じように女子側に入っている男性の保護者もいるのでアリだと思うが、宗一兄さんの手をとる男子が例外なく怯えている(だって眉間のシワがすごいから)のが少し気の毒だ。
「兄さん、笑顔」
「あぁ?」
 不機嫌さ全開の宗一兄さんと男子には申し訳ないが、これはこれで楽しい。始まるまでは男子と手を握る気恥ずかしさが多少あったものの、今は全くそれがない。
「お前は楽しそうだな」
「うん!」
 思いっきり微笑むと、兄さんが「仕方ねぇなぁ」と言わんばかりの苦笑を浮かべた。ついでにその時のダンスパートナーの男子までが顔を歪めていたので、もしかしたら嬉しすぎて変な笑顔だったのかもしれない。そんなに顔を真っ赤にしてまで耐えなくてもいいのに。意地悪な男子だ。

「お、次のお相手はかなこちゃんかー」
「磯貝さん!」

 どうやら同じ輪にいたらしい磯貝さんが隣に立つ。掌を重ね合わせながら、もう1人の知人の行方を尋ねる。
「森永さんは?」
「この列の後ろにいると思うよ」
 磯貝さんの手はそれまでの男子と違って大きくて厚みがあり、すっぽりと掌全体を包み込んでくれる。まさに安定感のあるオトナの男の人の手といったところ。これは磯貝さんと組んだ女子はトキめいたに違いない。しまった、ちゃんと髪型チェックしておくんだった。
「久しぶりのフォークダンスはどう?」
「この歳になって女子中学生の手を握れるなんて役得だね」
 爽やかにそう言われ、思わず吹き出してしまった。なんとも磯貝さんらしいし、彼が言うと全くいやらしくない。外見はもちろん、中身も素敵な人だと知っているからだろうか。
 そのまま余裕のあるリードに促され、くるりとターンする。
 うん、同い年の男子とは桁違いのスマートさ。
「磯貝さん、ダンスうまーい」
「そう?フォークダンスなんて誰がやってもいっしょだよ」
 そう言って磯貝さんはにっこりと微笑みを残し、次のパートナーである宗一兄さんの隣に移動した。

「うげっ!磯貝!」
「まさか宗一君とダンスを踊ることになるとはねー」
「うぎゃあ触るんじゃねぇ!」
「フォークダンスなんだからしょうがないでしょ。え、指先だけってどんなプレイよ」
「プレイいうな!」
「焦らしプレイ?」
「お願いだから死んでくれ!」

 もう、こんなところでまで喧嘩しなくてもいいのに。
 宗一兄さんったら終わって離れていく磯貝さんに砂をかけそうな勢いだ。
「ちょっと兄さん!」
「かなこッ!お前終わったら手ェ消毒しろよ!」
 まったくもう!

 
 その後はたいした騒動もなく進んでいったのだが、他所のクラスの男子が宗一兄さんの手を取った時は様子が違った。
「あっ」
「おうお前、また本忘れていっただろ」
 その男子は平均よりも小柄なメガネ男子で、同じクラスになったことはないが学年トップの成績だということは知っている。いつの間に宗一兄さんと知り合いになったのだろう。
 すべての会話が聞こえるわけではないが、珍しく宗一兄さんがよく喋っているようだ。「全部終わってから取りに行け」(何をだろう)とか、「せっかくならこれも読んどけ」(本というか論文)とか、兄さんが喋る都度、男子がコクコクと頷いている。
「さっき俺がいったこと忘れんじゃねぇぞ」
 兄さんがそう言うと、男子はしっかり頷いていた。
「はい、あの、」
「ん?」
「俺、将来あの先生みたいな研究者になります」
「へぇ。頑張れ」
「はい」

 そのまま宗一兄さんと男子生徒は離れた。
 本当に、なんの話をしていたのだろう。


 それから3人パートナーを替え、フォークダンスの曲が止んだ。





 『3年生の皆さん、素敵な思い出になったでしょうか。参加してくださった保護者の皆様、卒業生の先輩方ありがとうございました。続いての競技は――』

 早々と次の競技のアナウンスが始まったので、3年生は粛々と退場する。友達の頬が僅かに上気しているのをみると、うまく何某君と踊れたのだろう。きっとテントの中で話を聞かされるに違いない。
 生徒たちは退場門から出るが、保護者はそれぞれでもといた場所に戻っていく。チラリと宗一兄さんを探すと、兄さんは地面にしゃがみ込んでいる森永さんの襟首を引き摺っていた。

「ぐすん……先輩まであと2人だったんですよぉ〜……」
「うるせぇ!さっさと立ち上がらんか!」

 ポカリと宗一兄さんの拳が森永さんの頭上に落とされた。しゃがんでいるおかげで脳天に拳をくらい、森永さんが身悶えている。さながら熟練のコントを見せられているようで、先程まで森永さんで騒いでいた友達がこの光景を見ていないことを願うばかりだ。
 しかしこんなに息のあった2人だもの、ダンスを踊っていたらどんなに優雅……なわけないか。きっと磯貝さんのとき以上に宗一兄さんは暴れただろうし、森永さんは森永さんで咎めることなくニコニコしていて――。


 なんだ。いつもの風景ではないか。

 そっか、この感じが2人の日常で、息が合ってるということなのか。

 もう一度振り返ると、さっさと歩き出した宗一兄さんを森永さんが追っかけている姿が目に入った。

 これも、いつもの風景。



 仲良しなんだから、ホント。

 




*****

 ちなみに、その後宗一兄さんに5人がどんなに目立っていたかを教える際「5人とも皆お相手がいる」と公言したというと、
「は?俺は……」
 と言ってきたものだから
「森永さんがいるじゃない」
 そう返すと、へなへなと宗一兄さんが崩れ落ちたというのはまた別な話。
 

 
 

 
   →次の演目はコチラ
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