voice 2

 先週は変な天気でしたね〜((´・ω・`;))恐ろしく寒いと思えば、週末は3月並みの陽気。。 
 おかげさまで風邪引きました。
 うたた寝から目が覚めた時、「あ、やべっ」と思ったんですよね…。
 冬場のうたた寝、ダメ、絶対。


 以下、前回の記事に鍵付きでコメントを下さった方へのお返事になります。

  1月21日午前中①にコメントを下さったお客様
 なんと、そんなに不安にさせてしまいましたかっΣ(´Д`*)書いてる本人が残念スキーなもので、森永君が少々可哀想なことになってしまいました。今回まで少し切ないかもですが、きっと兄さんがなんとかしてくれると思います!(希望)

  1月21日午前中②にコメントを下さったお客様
 わー、会話に突っ込んでもらえて嬉しいです\(^o^)/仰る通り内容が不穏になってしまったもので、そういう部分でほっこりしてもらえたらいいなと思っていたところでした。今回も二人の「会話」を楽しんでもらえたらいいのですが(^_^)



 さて、今回のお話は前回のお話の続きになります。
 後味の良くない終わり方だったので早く載せたかったのですが、なんとも体調が追いつかず。。
 しかも今回も微妙にシリアス風味かもです。あくまでも”風味”ですが。
 また、構成上、時間軸が前回のお話の直後となっていますので唐突にお話が始まります。


 ではでは、よろしくお願いいたします。








 明らかに様子がおかしくなった自分を、福島教授はじめ学生たちがかなり心配してくれた。
 早退を促されたが、今日は学部の授業もあるし外部の研究者の来訪も控えている。それに今帰ったところで森永が帰ってくるのは夜になってからだ。
「巽君、もしかしてご家族に何かあったんじゃ」
 心配そうに尋ねてくる福島教授に、曖昧に首を傾げて発言を控える。とにかく大丈夫だと繰り返し、研究室に戻ってもらった。
 同じように心配気な表情でこちらを伺っている学生には「手が空いてるならサンプル追加してやろうか」と脅しをかけ、作業に集中させる。一通り指示を出し、後のフォローはD2の学生に任せて廊下に出た。




 と同時に廊下をダッシュした。




 おそらく今までで最速のスピードで自分の個室に戻り、室内に入るなり白衣のポケットに突っ込んでいた携帯を掴みだして操作する。変に息が上がって手元覚束ない。履歴から森永の番号を見つけ出し、震える指先を叱咤して発信ボタンを押す。そしてすぐさま携帯を耳に当てて――

 あ、声が出ないっていってる人間に電話かけてどうすんだ。

 そんな基本的なことに気付くのと、耳元で『おかけになった番号は現在使われていないか電源が入っていないため――』という無機質なアナウンスが聞こえてきたのはほぼ同時だった。メールに病院に行くと書いてあったのを思い出し、意図的に電源を切っているのだろうと思い至る。


 ――何をやっているんだ俺は。



 背を部屋のドアに預けたまま、そのままずるずると崩れ落ちる。ジーンズ越しであってもリノウムの床は冷たい。しかし起き上がる気力もなく、尻が冷えるままに暫くそのままの姿勢でいた。







 夜、アパートに帰ると予想通り森永の姿はまだなかった。
 ろくに中を見ずに買った弁当をモソモソと消費し、簡単にシャワーで風呂を済ませてしまえばもう何もすることがない。
 どうにも落ち着かないのでさっさと帰ってきたはいいが、研究室に籠るのも家で一人待つのも同じことだったと気付く。どっちにしろ、過ぎていく時間は等しいのだから。森永はまだ帰ってこない。
 せめてBGM代わりにとTVをつけると、この時間帯はどの局も賑やかで騒々しい。耐えうる程度に音量を絞り、コーヒー片手にいつもの定位置でパソコンを開いた。気が向けばと一応仕事の資料を傍らに置いているが、今のところ気が向かないのでそのまま放置する。
 ディスプレイの某ウェブブラウザのアイコンをクリック。研究室のパソコンでも散々検索してきたが、改めて検索バーにいくつかの単語を打ち込んだ。表示されたサイトの幾つかは見覚えがある。中でも参考になったと思うのは再度開いてクリップしておくことにした。そのような作業めいたことでもしていれば、早く時間が過ぎるような気がするから。

 

 そうして20を超えるサイトをクリップし、さらに新しい知識を求めタッチパッドを操作する。
 やがて現役の医師が監修してるサイトに辿りつき、食い入るように画面を覗き込んでいると――



 カタンッ。



 玄関で物音がした。
 弾かれたように立ち上がり、その勢いのままリビングを飛び出す。


「森永ッ!!!」


 果たしてそこには目をまん丸にしている森永がいた。口元はマスクで覆われているが、いつものコートにスーツのスタイル、目につく範囲に包帯も絆創膏も見当たらない。
 こんなときなのに「目ん玉落ちんぞ」と注意したくなるほど、森永の大きな瞳は見開かれている。どうやら先ほどの自分の行動は相当に森永を驚かせてしまったらしい。
「あ、えと、お帰り……」
 過去最大級に盛大な出迎えをした割にはあまりにもフツーな言葉が口を突いた。我ながら恐ろしく気まずい。
 そんな自分の気持ちを察しているのか、森永は真ん丸にしていた目を柔らかく細めた。ああ、いつもの森永だと、ほんの少しだけ気持ちが緩む。
 そして柔らかい目元を保ったまま右手の中指でマスクを引き下ろし、



「       」



 確かに口元は動いたのに、“タダイマ”という形に動いたのに、そこからはあの耳触りの良い、対自分への発言だと途端に甘さを乗せる声が聞こえてこなかった。覚悟していたはずなのに、身体が硬直する。
 そんな二の句を継げないでいる自分を見て、マスクを顎に引っかけたままの同居人が苦笑いを浮かべている。その顔はいつも見ているナサケナイ顔と変わらないのに。

 「もー先輩ったら驚きすぎですよぉ〜」という声が聞こえたような気がした。




 


 風呂上りの森永を見ても、やはり普段とどこも変わりないよう思える。いつも通りパジャマの上に無地のカウチンカーディガンを羽織り、淹れてやった緑茶を美味しそうに啜っている。

「あー、えっと、何から聞けばいいんだ……」

 帰る早々に現状を説明しようとする森永を制し、「取り敢えず風呂入ってこい」と脱衣所にそのまま放り込んでやったのが30分前。症状を詳しく知りたい気持ちは強いが、その前に森永をリラックスさせることの方が先だと思ったから。ただでさえ疲れているはずなのに、今日一日でどれほどの疲れが上乗せされたことか。
 それに予想以上に動揺してしまった自分を立て直す時間も欲しかった。何とか落ち着こうと森永が風呂に入っている間にタバコを一本吸ってコーヒーも飲んだものの、今この場面でその効果はあまり感じられない。だってほら、何も言わない森永を前にして言葉をかけられないでいるのだから。
 どうも歯切れの悪い自分を見て、森永がリビングに持ち込んだ仕事用のバッグからクリアファイルを取り出した。そして起ち上げたままのノートパソコンを指してちょこんと首を傾げる。
「使うのか?」
 パソコンを押しやると、森永はソファーから滑り降りてラグに直接胡坐をかいた。片手でパソコンのスリープを解除しながら、手にしたファイルを渡してくる。
「読めってことか?」
 ファイルの中に収まっていたのは、病院の待合室でみかけるような病気をわかりやすく解説したパンフレットだった。一際目立つフォントで書かれているのは、
 
「『ストレス性失声症との付き合い方』――」

 口に出して呟くと、森永がこちらをみてコクンと頷いた。そしてパソコンのディスプレイをこちらに向ける。いつの間に一太郎を起ち上げたのか、そこには文字が――


『せんぱい、大好きですッ!!!!』


 思わず森永の頭上に拳を落としてしまったのは条件反射だから仕方ない。まがりなりにも病人だと気付いたときは時すでに遅し。
 もの凄く、いい音がした。
「~~~!!!」
「てめぇ、ふざけている場合じゃねぇだろうが……」
 何か抗議をするような視線を向けてくるが、口がきけたのなら「ふざけてません!先輩への思いは真剣です!」とでも言っていたことだろう。悲しいことに、この馬鹿の言いそうなことぐらい見当がつく。
 まぁいつものやり取りでだいぶ気持ちが落ち着いたので、その点に関してだけは褒めてやってもいい。
 躊躇うことなく同居人をゲシゲシと足蹴にし、
「今日何があってどこでどういう診断を受けてきたのかをちゃっちゃと書かんか……!」
 腹の底に響くような声でそう言うと、ヤツは慌ててパソコンに向き直った。初めっからそうしとけ馬鹿野郎が。
 あっという間に白い画面にサクサクと文章が綴られていく。


『ごめんなさい、やっぱり一日に一回は先輩に気持ちを伝えないと落ち着かないので。(※この一文を読んだ後もう一度蹴りを入れた)えっとですね、実は自分の声が出ないだなんて会社に着くまで気付かなかったんです。今朝は先輩が起きる前に家を出ちゃったし、ご近所さんにも会わなかったから。一人だと外で声出す機会なんてなかなかないんですよねー。今まで考えもしませんでした。で、同僚に挨拶しようとしたら、口は動くのに声が聞こえないんですよ。あれー?って思っていたら俺以上に回りが激しく動揺しちゃいまして。そのまま医務室に連行→大学病院で精密検査に連れて行かれました。これがおそろしく長くて長くて……まぁ普通なら要予約のところを無理やりねじ込ませてもらったらしいので、文句は言えませんけど。正直なところ、検査でむちゃくちゃ疲れました……。
 で、検査の結果ですが、声帯にも脳にも異常はありませんでした。
 じゃあなんで声が出ないのかというと、先生曰く、おそらくストレスを溜めすぎたせいだろうと。こういう症状のことを、

 【ストレス性失声症】

 というらしいです。ストレスが原因で一時的に声が出ないだけで、ゆっくりしていれば治るとのこと。そんなにストレスを溜めてたつもりはないんですけどねぇー、もう俺も年なのかなぁ(涙)で、検査には上司もついてきてくれていたんですけど、病名がわかるなりすぐ上のおエライさんと連絡をとってくれて、先日のプロジェクト成功のご褒美として特別休暇を取り付けてくれました!なんと!二週間ももらえるらしいでーす!』

 そこまで打ち込んで森永(おそらく笑顔)がこちらを振り返ったが、悪いが顔を見る余裕なんてなかった。視線はディスプレイに打ち出された一文に釘付けになる。


『声帯にも脳にも異常はありませんでした』


 ――よかった……。
 失声症なら覚悟していた病いの中では比較的程度の軽いもので、森永のいうとおり治療すればちゃんと治る病気だ。何年か前に皇后が患っていた病だと記憶している。確か治療期間はまちまちで、大体は一週間程度、他に精神疾患等を患っていれば半年以上かかる場合もあるのではなかったか。その場合は抗うつ剤等を用いた薬物療法がおこなわれると、どこかのサイトに書いてあった。
 最悪の状態ではなかったことに安堵の溜息を漏らすと、ちょいちょいと森永が膝をつついてくる。
「ん?」
 すると森永は正座に座り直し、深々と頭を下げてきた。そして再びキーボードを叩きだす。

『心配かけてごめんなさい。声はでないけど、俺は元気ですから』

 そしてこちらを向いてニッコリ微笑む。
 まるで自分を慰めるかのようなその笑顔に頭を殴られたような衝撃を受けた。



  何が“ごめんなさい”だ。
  謝らなければならないのはこっちの方だ。
  お前の体調が悪いのをわかっていたのに何もできなかった。
  ただただ見ているだけで何もしてやれなかった。
  こんな事態になるまで放置していた。
  こんなに近くにいるのに助けてやれなかった。
  こんなの同居人未満の存在ではないか。
 
  俺は、お前にとって一番近しい存在ではなかったのか。



 頭ではそう思うも、口には出せない。だってこんなことをカケラでも口走ってしまえば、きっと人のいい森永は「そんなことないですよ」と慰めにかかるだろう。コイツの行動パターンなんて百も承知だ。そんなことをさせたいわけじゃない。

 だからゆるゆると頭を振るにとどまると、森永は今度は少し困ったような笑顔を浮かべてきた。声を出せれば「もー俺は元気ですってば~」と言っているに違いない。
「……治療方法は」
 再び森永がパソコンに向き直る。
『入院も薬も必要ないみたいです。明日また病院に行くので、そのときに改めて話があるかと』
「俺もついていく」
『先輩、明日は一限からぎっちり詰まってるでしょ。大丈夫ですよ』
「じゃあ松田さんに付き添ってもらえないか聞いてみる」
『だーいじょーぶですって~。ちゃんと準備してるんですよ!』
 再び森永は仕事鞄をゴソゴソしだし、得意満面で取り出したのはシンプルさが売りの某良品店のらくがき帳だった。なるほど、それで筆談をするというわけか。スマホなら手軽だが、外ならともかく病院で操作するのは周囲の目が気になるのだろう。
「でもなぁ……先生の話を聞くなら一人より二人の方がいいだろう」
 なおも渋っていると、森永はキーボードに指を乗せたまま少し逡巡した。そして躊躇いながらカタカタと文字を打つ。
『おそらく診察室には身内以外は入らせてもらえないだろうから、俺一人で大丈夫ですよ』
「……そうか」





 なぜか胸がツキンとした。
 














   →3

※当方、医療に関する知識は全くといっていいほどございません。
 ですので、本文中の症状につきまして不適切な表現がございましたら大変申し訳ありません。
 また、不愉快な思いをされた方がいらっしゃましたら、この場を借りて重ねてお詫び申し上げます。
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動揺する兄さんいいですねー!
兄さんってテレビ見なさそうバラエティに興味なさそうなのに、テレビつけちゃうのは森永くんの影響もあるのかなー?よく同居人が見てるからつい…みたいな。
そしてどんな時でも瞬時に兄さんの明日のスケジュールが出て来る森永くん、さすがです(笑)

かわいそうな森永くんが兄さんに甘やかしてもらえる事を祈ります(笑)

Re:

動揺しちゃいましたー\(^o^)/
普段は冷静(というか他人に興味がない)な兄さんですが、こと大切なヒト・モノ絡みになると感情が揺れちゃいそうだなぁと。
森永君の変態っぷりは何があっても通常モードってことで。笑
そんな変態森永君、兄さんに甘やかしてもらえるのは次の次のお話からですかね~?
あと1話似非シリアスが入りますが、森永君が甘やかされるまでお付き合いくださいませ!
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