original/another

 6月になりました\(^o^)/
 今月のGUSHには暴君が掲載されますね♪来週中には手に入る……かな(汗)
 待ち遠しいです!


 さて皆様、数日前から某M社から発売のコラボスイーツはチェックされたでしょうか。
 私はまだお目にかかっていないのですが、前回のシェイク同様、暴君ファンとして一度は手を出さなければでしょうね……まぁ私は食べる前にこうやってお話に使わせてもらいましたけどね( /ω)!
 ということで、今回は某社のコラボスイーツネタです。少しでも、時事ネタとして楽しんでいただければ。


 ではでは、よろしくお願いいたします。







 暦上ではそろそろ梅雨入りの声が聞こえそうなものだが、今年は遅れているのか未だ気象庁からの発表はない。気温だけはすっかり夏仕様で、これにあのジメジメとした湿気が加わるのかと思うと今からゾッとする。

 今日も今日とて朝から快晴だ。
 ベランダの向こうに広がる空には雲一つ浮かんでいない。
「今日もすげぇいい天気だなぁ」
「はい。きっといいお式になると思います」
 そう返す森永はスーツ姿、それもフォーマルなブラックスーツだ。首元のネクタイは光沢のあるシルバー、長めの前髪をサイドに流した出で立ちは、どこからどうみても平時の格好ではない。そんなナリでいつものマグを傾けているものだから、非日常感が甚だしい。
「お前、時間大丈夫か?」
「はい、もうちょっと大丈夫です。せめてこのコーヒーを飲み終わるまでは。先輩こそ、そろそろ学校行きます?」
「お前が出てからな」
 今日は森永はもちろんのこと、田所と美春にも出てこないでいいと言ってある。特に急ぎのものはないので、培地の経過観察しつつ資料を眺めるだけの、一人のんびりとした一日を過ごす予定だ。
「あ、もしかして俺がいないとさみs」
「心の奥底からせいせいする」
 思わずそのふにゃけた面に拳がでかけたものの、さすがに今日は自粛した。それは断じて森永のためではない、今日コイツを招待した二人のために、だ。
「今夜はご飯作れなくて申し訳ないです。コンビニ弁当にするならちゃんと野菜サラダも買ってくださいね」
「わかってるっつーの。こっちは気にしなくていいからゆっくりしてこい。久々に会うヤツもいるんだろ?」
 そう言ってやれば、非日常モードの森永はふんわりと微笑む。
「ありがとうございます。まぁ久しぶりっていっても学部の卒業式以来だから、そんなでもないですけどね」
「しかしお前の歳で結婚って早くないか?」
「お相手は結構年上だったんじゃないかなぁ。大学に入ってからすぐに付き合いだしたらしいんで、付き合ってきた年数はそこそこ長いんですよね。一途だって周囲から評判でした」
 ふぅん、とテーブルの上に置いてあった招待状を眺めるが、そこに書いてある新婦の名前を見ても何も思い出すことはない。森永曰く福島ゼミだったらしいのだが。
「同期は全員呼ばれているのか?」
「はい。さすがに俺も男一人じゃ新婦側の席に座れませんよ、悪目立ちが過ぎます」
 いやお前は新郎側にいても目立つと思うぞ、と口に出さずに心で呟く。結婚式という誰もが着飾った場であったとしても、フォーマルな格好をした森永というのは頭一つ抜けていると思う。下手すると新郎より目立つんじゃねぇかコイツ。
「……俺の顔に何かついてます?」
 無意識にじっと眺めていたらしく、駄犬が戸惑ったような、でも嬉しそうにこっちを見ている。
 しかし、顔だけ見ればいつもの森永なのに、全体的にどうしてもコレジャナイ感が溢れているのはどうしてだろう。服装に何か気になるところでもあったのかと分析し、改めて正装した森永をじっと眺める。
「え、先輩?何、どうしたの。照れるんだけど」
「……お前、ポケットチーフはいいのか」
「え、あった方がいいです?」
 バタバタと自室に駆け込み白いポケットチーフをさして出てきた森永を見れば、もうこのまま式場のモデルにでもなってしまえという完成度だった。しきりにやりすぎじゃないかと気にしているが、フォーマル度が上がっただけで別に問題ないだろう。
「おかしくないですか?」
「お前の場合、見た目よりも頭ん中がおかしい」
 今日は髪もスーツに似合うようにセットしているので、普段前髪に覆われている額の大部分が露わになっている。それだけでいつもより大人っぽく見えるのだから、前髪の効果は結構偉大だ。だからこそ生じるコレジャナイ感なのだが、決しておかしいわけではない。
 うーん、一体この違和感はなんだ。



 まだ大丈夫だと愚図る馬鹿に蹴りを入れ(顔じゃないからセーフ)、とっとと玄関に追い立てた。紐付きのストレートチップの革靴に足を入れれば完璧だ。
 
 いや、完璧というか……。
 これは……。

 黒の革靴を履き終え、こちらに向き直った森永の肩に手を置く。「え、なんですか、もしかして“いってらっしゃい”のキスですか?」と寝言を宣っているがガン無視だ。
「森永」
「はいっ」
「……無事に帰って来られるように祈っといてやる」
「え」
 先ほど本人の口からも状況を理解しているような発言があったが、新婦側で参加するということはほぼ間違いなく周囲は女性だらけだろう。そんな中にこんな男を放り込むのだ、狼の群れの中に羊を放り込むようなものだ。何かしら仁義なき戦いが勃発しないわけがない。

 駄犬の飼い主としては、コイツのせいで目出度い場が修羅場にならないことを願うばかりだ。








 土曜日の午後といっても、構内にはそれなりに学生の姿がある。
 文系はともかく理系の方は大抵の研究室は誰かが出てきているものだ。研究対象の観察や記録付けに穴はあけられない。
 とはいえ、普段よりも格段に人が少なくて静かなのは間違いなく。それ故週末は実験が捗っていたのに、森永と同居するようになって少しだけその習慣が狂ってしまった。
 平日に手が回らない物の買い出しに付き合うのはいい。成人した男の二人暮らしなのだ、買い出しの量も当然に多い。一緒に暮らしているのだから片方に負担を押し付けるわけにいかない。
 問題なのはもう一つのパターンの方だ。つまり、前夜に駄犬が無茶・無理・無謀を働いた結果、動けなくなるという。アレは本当に腹が立つ。こうして思い返すだけでも頭にくる。今度盛ってきたら躊躇なく股間を蹴りあげてやろうか。

 と、せっかくの貴重な時間を駄犬への呪詛で費やしそうになっていたとき、



“ガラガラガラッ”

「誰かいるかな?」
 


 実験室の入り口から顔を覗かせたのは、ヤギのようなヒゲが特徴的な隣の研究室の教授だった。福島教授とも親しい人で、何度か研究室で酒盛りをしているのを目撃したことがある。
「おや、今日は巽君だけ?」
 室内を見渡してしょんぼりと眉を下げた様子が気になり訳を問うと、どうやら今日中に取りたいデータがあるのに頼んでいたゼミ生に急用が入ったらしい。聞けばそのデータ取りは結構面倒なヤツで、これはその辺の学生に任せるのは難しいだろう。
 少しだけ考え、困り顔の教授に申し出た。
「良ければ俺がやりましょうか」
「え、いいの?それは願っても無いことだけど……巽君こそ実験があるんじゃないのかね」
 こちらをそう気遣いながらも、教授は八の字の眉のまま心からホッとしたような表情を浮かべている。
「悪いねぇ。森永君がいれば彼を借りようと思っていたんだけど……」
 残念、今頃駄犬は見世物になってる。
「じゃあ巽君、お願いできるかな。君に手伝ってもらえたら間違いないだろう」

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 結果、教授の手伝いは午後中かかった。予定していた資料の読み込みはできなかったものの、まぁこれはこれでいい経験となったのでヨシとしよう。
 使った器材を洗浄し伏せていると、一旦自室に戻っていた教授がせかせかと戻ってきた。
「いやいや巽君、本当に助かった!下手に人数を集めるよりも君一人の方が余程効率が良い。こんなに優秀な学生がゼミにいれば福島先生も心強いねぇ」
 そう言いながら、手にしていた何かをこちらに差し出す。
「はい、これ」
反射的に受け取ってしまったそれは昔懐かしい黄色いパッケージで、こんなに小さかったかと思うほど手のひらにおさまるサイズだった。幼い頃からの馴染みがあるからだろうか、甘党ではないのにそのエンゼルマークを見れば中身はもちろん、味までもが簡単に思い出せる。
「疲れたでしょ?これ、生協で見かけて懐かしくてねぇ。もし今日森永君に手伝ってもらえたらあげようかと思っていたんだけど」
「あー……えっと、俺がいただいていいんですか?」
「もちろん!疲れた時の当分補給は大事なんだよ。今日は本当に助かった、ありがとうね」
 満面の笑みを浮かべられては突っ返すわけにいかない。簡単に礼を言って実験室に戻り、あらためて手の中の小箱を眺める。
(せっかく貰ったしな)
 一体これを口にするのは何年振りだろう。そういえば、前にどこかがこれとコラボした何かを売り出してなかったか。確かシェイク。その際に嬉々としてソレを購入した森永に一口飲まされ、散々な目にあったような。
 しかし記憶にあるソレとは違い、包み紙を剥いて口に入れたオリジナルは覚悟していたより素朴な甘味だった。甘いことに違いはないが、なんというのか、ほのぼのと、甘い。
(まぁオリジナルが一番食えるか)
 確か、舐めずに噛むと銀歯が取れるんだったっけ。いや、あれは同じ種類の菓子でも白い方だったか。舌なめずりをした童女が描かれている。
 教授のいうとおり疲れた身体にほどよい糖分だったのか、なんだか身体の強張りが解けていくような気がする。自分が思っているよりも割と疲れていたようだ。糖分の効力は馬鹿にできん。
 壁にかかった時計を見れば、時刻はまだ夕方と呼べる時間帯だ。森永が帰ってくるのは夜も遅くなってからだろうから、駅前の本屋に寄ってから帰ることにしよう。




 そんな風にエンゼルマークを意識した後だったので、Mのマークでおなじみの某ファーストフード店の前を通った時には思わず店頭のポスターに目を奪われた。


 なんだ、また何かコラボしているのか。

 今度はなんだ?え、ソフトクリーム?いやいやいやいや、やりすぎじゃねーの。

 もとよりクソ甘いアイスと更にクソ甘いモンを掛け合わせるなんて――いや、そんなに甘くない、か。そこそこ甘い、じんわりと甘いモン、というか。まぁどっちにしても甘いモンの二乗に変わりない。
 ふと、数ヵ月前のやり取りを思い出す。甘党の同居人は、それはそれは嬉しそうな顔で極甘シェイクを飲んでいたっけ。


 ……。


 躊躇ったのは一瞬で、気が付けばプライスレスの笑顔に出迎えられていた。






 

 玄関の鍵が回る音がした。反射的に見上げた時計はまだ21時前を指している。どうやら二次会だけで帰ってきたようだ。
「ただいまです〜……」
 聞こえてきたヘロヘロの声に顔を向けると、リビングの入り口には出て行った時の格好のまま顔だけが老け込んだ森永の姿があった。
「おう、おかえり」
「うう……せんぱぁい……」
 覚束ない足取りで近寄ってきたと思えば、
「つ゛が゛れ゛た゛」
 ソファーに辿り着く寸前で崩れ落ちる。
 まぁこうなるだろうとは予想していた。
 読んでいた学術誌を伏せ、倒れている森永に近付く。傍に放置されている大きな紙袋から覗いてるブーケは式場に飾られていた生花だろう。白で統一されたバラとカーネーションと紫陽花のミニブーケは式場のロゴが入ったペーパーに包まれている。こういうのは普通女の招待客が貰うものじゃないのか。どうせ持った姿を写真に撮らせてくれとでも言われ、押し付けられたのだろう。
「花、水揚げしとくぞ」
 足先で小突くと、駄犬は顔だけを横に倒してこちらを見上げてきた。あーあー何て生気のない顔だ。大抵のハードスケジュールでも大丈夫なコイツが、たかが半日の結婚式でこの有様だ。せっかくセットしていた髪も、フローリングに突っ伏したことで軽く乱れてしまっている。
「ん、お願いします……俺も水揚げしてほしいです……」
「水風呂浸かってこい」
「違いますよぅ……元気がほしいってことです」
 よろよろと立ち上がる森永を目の端に捉え、シンクの洗い桶に水を張る。ブーケの根元をキッチンバサミで適当揃えて桶に放てば、あとは勝手に水を吸い上げるだろう。
 勝手に元気にならないのはこっちの方か。
「シャキッとせんかシャキッと」
「はい……」
 しょんぼりとドアに向かう姿が尚早不憫で、仕方がなく風呂上りに教えてやろうと思っていたことを今伝えてやることにした。
「おい。ちょっとこっちこい」
「え?」
 人差し指を内側に折り曲げて呼ぶと、まるで指先に糸でもついているかのようにフラフラと森永が近付いてくる。操り人形かお前は。
「冷凍庫」
「え?」
 キョトンとした顔をしつつも冷凍庫を覗いた森永だったが、その顔は一瞬にして驚きの色に変わる。
「え?!何でマックフルーリーがここにあるの?!しかもコラボのやつ!先輩、買ったの?!」
「今は駄目だからな。風呂入ってからにしろ」
 そう言ってさっさと隣を抜けようとしたところ、
「せんぱいっ!」
 がっちり腕を掴まれた。
 とっさに振り向けば、帰ってきたときのしょぼくれた顔から一転、そこには無駄にキラキラとした笑顔の森永が。
「ありがとうございますっ!」
「……いいから早く風呂入ってこい。何か香水臭ぇぞお前」
 と言った途端、一陣のつむじ風が巻き起こった――ように思えるほど、その場から森永の姿が消えた。現金すぎるだろ。
 と思えば、飛び出していった駄犬がひょっこりとリビングのドアから顔を覗かせた。
「――嬉しいです」
 乱れた前髪の下で微笑む顔はいつものようにだらしないけれど、決定的に何かが違う。
 朝感じたコレジャナイ感はまだ継続中のようだ。
「わかったから早く入ってこい」
「はいっ!あ、申し訳ないんですけど、冷蔵庫に移しておいてもらえますか?カチコチになってると思うので」

 いっその事レンチンでもしてやろうか。
 



 普段よりもだいぶ早い時間で風呂から上がってきた駄犬は、速攻で冷蔵庫からその小さなバケツのようなカップを取り出してきた。今隣でいそいそとプラスチックの蓋を開けている。
 シェイクの時もそうだったが、そのパッケージはオリジナルのデザインをそのまま模していた。それだけでもう中身の味が想像できるのだから味覚の記憶は恐ろしい。
「あれ、意外とそこまで固まってない?」
 そりゃそうだろう。まだ冷凍庫に入れて一時間も経っていないのだから。
 嬉しそうに付属のデカいスプーンを掻き回すその姿は、今日コイツに見惚れたであろう女性陣に見せてやりたいほど子供っぽい。セットしていた髪は通常モードに戻り、服装だっていつものパジャマだ。昼間のビシッとしたフォーマルモードは見る影もない。
「いただきまーす!」
 語尾にハートマークでも付いてんじゃねぇの、という程に声を弾ませ、森永が一口頬張った。


「んっっっ!!!」


 おいおいそんなに目を見開くな落ちるぞ。


「んんんんっ!!!」


 すげぇ、特別な照明をあてているわけではないのに目が輝いてきた。


「んっまいっ!!!」


 この反応はシェイクのとき以上ではないか。そんなに感動するほど美味いのか。



 手元のカップを驚いたように見つめながらも、その顔は比喩でも誇張でもなく本気でキラキラと輝いている。うっとおしい光を放ったまま、森永が身体ごとこちらを向いた。
「先輩も一口!ぜひ!」
「絶っ対、いらねぇ」
「美味しいですから!」
「クソ甘いに決まってる」
 頑として撥ねつけるも、今夜の森永はなかなかにしぶとい。
「甘いけど、ちゃんとあのミルクキャラメルの味ですからっ」
「……」 
 断るのも面倒になって渋々手を差し出すと、満面の笑みを浮かべた駄犬がカップを渡してきた。何でお前がそんなに嬉しそうなんだか。
 別にほだされたわけではない。カバンに入れっぱなしのオリジナルのことを思い出しただけだ。偶々ではあるが、今日本家本元を口にしたのだ。味を比較するのにはベストなタイミングではないか。決して、馬鹿の煩わしい輝きに負けたわけではない。
 テーブルの上のマグを確認する。まだ中にコーヒーが残っていたよな。


 突き刺さっているスプーンを引き抜き、恐る恐るその先端を咥えて――


 今回もすぐさま後悔した。


「あまっ………!!!」
「でも美味しいでしょう?」
 甘いのは否定しないのか馬鹿野郎!慌ててコーヒーを流し込むが、温くなっていたおかげで完全に甘さを上書きすることができなかった。口の中になんとも言えないベタベタした甘さが残る。
「俺はシェイクよりこっちの方が好きですね」
 そう宣う森永の顔は、カップの中身と同じくらい甘ったるく緩みきっている。心から幸せそうな顔でクリームをパクつく姿を見ていると、コイツの前世がカブトムシであることを断言したくなってくる。
「はぁ、美味しい」
「そんなに美味いかソレ。ソフトクリームにキャラメルソースとカリカリしたのをぶち込んでるだけなのに」
 個人的には、オリジナルの方が何倍も美味い。余計な甘さがなく、素朴な味わいのキャラメルの方が。
「え、だって」
 呆れた声音に反応したのか、すかさず反対の声があがった。


「先輩が、俺のために買ってきてくれたんですよ?美味しくないわけないじゃないですか」


 そう言うと森永は、最早もう見慣れた、でも今日は初めて見たような気がする、だらしない笑顔を浮かべた。

 それは幸せで仕方がないといったような、決して人前では見せない(見せられない)蕩けるような笑顔。

 今朝から何度も見ていたはずのその顔は、同時に感じていたコレジャナイ感が微塵も感じられない。なんのセットもしていない髪といつものパジャマの姿なのに。
 


 ――いや、
 
 だからか。




「ね、だから俺にとってはものすごく美味しいんですよ」
 恥ずかしげもなくそう言ってのけた同居人に、ほぼほぼ無意識に言葉が溢れた。
「森永はフツーが一番だ」
 失言に気付いたのは、ポカンとした顔の森永が手にしていたスプーンを落とした瞬間だった。目の端に落下物が入り込み、正気に戻る。
「……え。せんぱい、いまのどういう……」
「ばっ……!ち、違うからな!森永っていうのは森永のミルクキャラメルのことで、こんな何かに混ぜ込むよりもオリジナルのキャラメルの方が美味いってことだからな?!へへへ変な風に勘違いすんじゃねーぞ!」
「うん、つまり、素の森永が一番ってことですよね?」
「そ、そうだ!何事も、素が一番だっ!」
「素の森永が一番?」
「そうだっ!」
 我が意を得たりとばかりに大きく頷くと、
「えへへ……」
 駄犬が大きく笑み崩れた。もう人前には出せない、18禁レベルのだらしない顔だ。
「素が一番……」
「おまっ!キャラメルの話だからな?!」
「わかってますよぅ」
 イヤ駄目だこれ、もう色々と。
 言葉を連ねるのを諦めれば、どっと疲れが湧いてきた。駄犬が楽しそうに笑い声をあげている。
「うん、俺も素が一番だって思ってます」
「……そーかよ……」
「先輩の隣が、俺が一番素になれる場所です」
「知らねぇよ」

 なおも纏わりつく駄犬を蹴飛ばし、踏みつける。それなのに嬉しそうに笑っているものだから気持ちワルイ。しかもそうした状況下でも手にしたカップは死守しているのだから、大したものだというか馬鹿というか変態というか。いや、全部ひっくるめて、それが森永という男か。


 




 着飾った森永はもちろん見栄えがいいが、こういう感情だだ漏れの森永の方が自分にとっては好ましい。


 ……だなんて、誰がいってやるもんか。












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